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『どこまでも続く青い空』

 見上げた空はどこまでも続くほどに青く、遮るもののない太陽の光は血液のほとんどを失った私の体を暖かく包んでくれた。邪悪の気配が祓われた空は眩しく、そして優しかった。
 聖域に、そしてその近くの村を襲撃した冥闘士どもはすべて倒した。その中には冥界三巨頭も含まれていた。私の体は最早指一本動かないが、私一人の命を代償にそれだけの敵を倒せたのなら十分だろう。何より、今私の側で泣きじゃくる少女とその村を守れた事が私を心より安堵させた。
 少女の横ではシオンが私のことを見下ろしている。彼も、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
 そんな顔をするな。私はただ、聖闘士として自分が成すべきことをしただけだ。その結果、命を落とすことになったが本望だ。後悔など何一つない。
 とはいえ、君には迷惑をかけたな。ミーノスの最期の攻撃は、君がいなければこの村を吹き飛ばしていただろう。そうなれば、隣の少女も生きてはいなかったはずだ。もしそうなっていれば、死んでも死に切れないところだった。君には感謝している。
 迷惑ついでに、もう一つ頼まれて欲しい。
 その隣で泣いている少女に、双魚宮の薔薇を渡してくれないか。そして伝えて欲しい。私の肉体は滅んでも、私の意志と魂は常に仲間と共にあることを。だから悲しまないでくれと。それが私の、最期の願いだ。頼む――

10/23/2023, 11:59:08 PM