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 肩を叩かれ振り向くと頬にやわらかい何かがくっついて離れる。外から帰り冷えてしまった頬にそれは温かく、起きたことに思考が停止してこれは夢かと疑うほど。頬を抑えて立ち尽くした。
 え、今…?
 なかなかやってこない俺を不思議に思った君が近づいて、腕に閉じ込めた。何も喋らない俺を不安そうに見上げてくる。

「そ、そんなにいやだった?」
「違うよ。嬉しくて」

 君からすることが少ない愛情表現に心臓がいつにもなく早くなる。腕に収まった君にも移っていたのか頬が赤くなっていた。

「俺からもさせて?」
 手を添えて、お返しになめらかな色づいた頬にひとつ。君がしてくれた時とは逆で君の頬は熱く、俺の唇は冷えて「ひぁ」と思ってもみないかわいらしい悲鳴が届いた。愛おしくなって驚き閉じられた瞼にも唇を落として、鼻先にも。
 ゆるりと開きぶつかる視線。
 目と鼻の先、君の顔がこんなにも近い。

「もっと『Kiss』したいんだけど…。いいかな?」

 どこに、と言うまえに君からの『Kiss』が、欲しいところに降ってきた。

2/5/2023, 9:01:48 AM