終わりにしよう
「もう終わりにしよう」その言葉で私は固まった。どうして私のどこがだめなのそう聞きたかったが、私は言葉を飲み込んだ。なぜか声が出なかった。彼にも理由があるんじゃないか。そう考えると問い詰めることができなかった。あの日から数週間後私は小さな頃からの幼馴染の颯に会った。誰でもいいから愚痴を聞いてほしかったのだろう。颯が私の愚痴を聞きながらため息をついた。「あんなやつ忘れれば」そう言って颯は指を差した。差した方を見ると元カレだった。私は「泣きそう」っと思った。するとそれを読み取ったかのように颯がフワッと私を抱きかかえた。私は戸惑ったが、颯に身を任せた。颯は私をバイクに乗せるとこう言った。「俺の背中だけ見てろ」私は颯の上着をぎゅっと握ってこくんとうなずいた。元カレとすれ違うとき私は思わず目をつぶってしまった。颯は私の頭をポンポンと慰めるように優しくなでた。その手は暖かく、大きかった。私が「ありがとう」と言うと颯はボソッと「俺のほうがあいつよりお前のこと好きだっつーの」私はその言葉がはっきり聞こえたが、「えっ」と聞き返した。すると颯は「なんでもない」と言って誤魔化した。その後ろ姿は耳まで真っ赤で私は思わず笑ってしまった。その時思った。あの時あいつが「終わりにしよう」って言ってくれて良かったのかもしれない。でもあいつには感謝しておこう。あいつのおかげで本当の恋に気づけたんだから。
7/15/2024, 12:03:02 PM