NoName

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昔の友人は、魔法使いをしていた。
魔法使いといっても、漢方を煎じたり、自身の運命をルーン石で占ったりすることを生業としていた。
彼女の目には、普通の人には見えないものが見えるらしかった。
例えば、砂の一粒とっても、彼女にとっては、苦しみを刻む、一縷の運命に取れるらしかった。
子供の足音は、精霊の様相を身にまとっまているとも言っていた。
彼女の淹れる、生姜の入った甘草のハーブティーが、僕は好きだった。
妙な話で、彼女はいつしか消えた。
魔女だからだろうか? それとも、それも彼女は定めとしてとらえたのだろうか?
人に好かれていた彼女が、姿を消すとは、考えづらかったが、どこにも足跡を残さず彼女は消えた。
何を思って彼女は消えたのだろう?
僕への皮肉?
彼女を選ばなかった、僕への当てつけの如く、投函された手紙には記されてあった。
「さよらなら、バイバイ。私が生まれてこなかった日を、探しに行ってきます。それでは」

7/6/2023, 10:12:21 AM