椋 ーmukuー

Open App

休日にしては少しだけ早い起床時間。布団の誘惑に打ち勝って散歩に出ることにする。いつもみたいな騒がしい雑踏に揉まれる事もないからヘッドホンで耳を塞ぐ必要も無い。相変わらず静まり返った街並みとようやく顔を出し始めた太陽。誰もいない散歩道に少しだけ鼻歌を歌ってみたりもした。

いつもは寝過ごす朝も今日は珍しく起きて活動していて、なんだか体が冴えているようだった。
こんな充実した日なんて滅多にないから。たまには朝からコーヒーなんて淹れてみたりして。どこからかコーヒーミルを引っ張り出して作り方からこだわってみたりもして。

熱々のコーヒーは大人らしくブラックで。口に広がる苦味と鼻を抜ける香ばしさがたまらなく美味しい。いつからこんな苦いもの、飲めるようになったんだっけか。ほろ苦いコーヒーと甘い甘い青春時代が緩和して溶けていく。

部屋が整うと、心も整うらしい。そんな迷信じみた事、誰が信じるか。と、反論するものの、掃除は義務みたいなものだから結局掃除機に手をかけ、洗濯機の電源をONにした。
たまにはいつもより丁寧に掃除して、自分の好きな柔軟剤を使って家事だって楽しんでみたっていいじゃない。

綺麗になった部屋でする事も無くなった優雅な休日。普段なら視界にすら入らなかった本棚の本に手を伸ばす。掃除をした後だからか、綺麗に整列して、読んでみろと言わんばかりに表紙を光らせている。たまには、現実から逃避する時間だって必要なのかもしれない。

昼食が終わると睡魔なんてものが襲ってくる。全人類の敵。そうそう勝てる猛者なんていないだろうに、私たちは毎日そんな強敵と闘っているんだろうな。いつもは社内コーヒーで流し込むカフェインも今日は上司もタスクも存在しないから必要ない。たまには潔く受け入れてみたりして。お日さまの匂いがするふかふかベッドにとろりと眠り落ちていってみたりもして。

優しく差し込む日差しで目覚めると、なんだか温かい気持ちが溢れた。たまにはこんな日も悪くないかもね。背伸びをした後にちょっぴり一人で笑ってみたりもして。

題材「たまには」

3/5/2026, 11:41:47 AM