NoName

Open App

「ねえねえ、お父さん。お空が曇でいっぱいになって太陽さんが隠れちゃった時、太陽さんはなにしてるの?」
 せっかくの休日、どこかへ出かけようと思っていたが、窓の外に広がる暗い雲を見ていると妙に気分が下がってしまった。
 そんな重い空を眺めながら、寝転がっていると娘が腹に乗りながら疑問をぶつけてきた。
「……何してんだろうなあ」
「えー、お父さん知らないのー?」
 答えが返ってこなかったことが不満で、娘は俺の腹の上で跳ね始める。
(……さっき食べた美味い昼飯が、出ちまいそうだ)
 娘の両脇に手を入れ、腹の上から退かせた。
「お父さん、お昼寝終わり?」
「腹の上で遊ばれたら寝るにも寝れないだろ」
「そっかー」
 理解していなさそうな返事をしながら娘をあぐらの上に座らせる。
 そこで皿洗いを終えた彼女がくすくすと笑いながら、こちらへやってきた。
「ふわふわな雲のお布団で今のお父さんみたいにお昼寝してるのかもしれないね」
「じゃあ、朝から見えないから太陽さんはお寝坊さんだね! お休みの日のお父さんと一緒!」
 楽しそうに笑う娘を見て、彼女は幸せそうに笑っている。
 彼女たちの笑顔に包まれていると、さっきまで暗く感じていた雲も、少しだけ明るく見えた。


――曇り

3/23/2025, 4:06:08 PM