お題「幸せとは」
「幸せってなんだろうね」
って僕が聞くと
「それは難しい問題だねぇ」
とオレは冗談めかして腕を組んだ。
答えは喉のあたりまで出かかっているのだけれど、その答えが喉元を越えようとすると「オレ」が再考を求めるのだ。
『そんな答えは幸せではない』
『その論には穴がある』
『そんなことを言ったら世間に叩かれる』
拉致があかないから僕は僕に無理やり白状させる。
「友達がいて、お金がいっぱいあって、家事洗濯を引き受けてくれる女の子がいて、しかもセックスもさせてくれる、名声があって、友達は僕を尊敬してくれて、年収が......」
「まてまて」
そこまでいうと耐えかねて、オレがストップをかけた。
「なんだよ、いいとこなのに」
オレは僕にマユをしかめて一言いう。
「王じゃん」
「まぁそういうことだよね」
「セックスしたいなぁ」
「うん」
「尊敬されたいなぁ」
「うん」
「女の子に優しくされたいなぁ」
「うん」
「神じゃないんだよ」
「ほう」
「王様なんよなぁ」
「あ、オレ、お前が本当に求めているものが分かってきたよ」
「えー、なんだろう?」
僕は冗談めかして腕を組んだ。
喉を越えて出てきそうな答えはとても単純で、剥き出しで、言葉にしたらバカバカしく思えてしまうようなものだったからだ。
1/4/2023, 2:33:01 PM