"冒険"
開架書庫が本の森なら、閉架書庫は洞窟みたいな空間だと思う。
本の保管の為に一定の気温に保たれていて、光量も落としているから薄暗い。あまり人が出入りしない、しんと静まり返った、外界から隔絶された空間。
学校の司書の先生から紹介してもらった大学図書館には、閉架書庫というものがあった。
通常は一般公開されていない所が多いのだろうが、その図書館では鍵が開いている時は自由に出入りできた。まぁ開館時間に立ち入る人は殆ど居なかったけど。
棚には学術誌や論文、個人文庫、全集等々数え切れないほどの書籍が犇めき合っていて。端がほつれた和装本や、海外文学の原書なんかも置かれていた。
机も椅子もない空間だったから、脚立に腰掛けながら本を読んだ。
目を悪くするし、他の利用者がビックリするから表で読みなさいと何度司書さんに言われたことか。
軽く内容を確認するだけのつもりが、いつの間にか読み耽ってしまうんだよなぁ。
静かで薄暗い洞窟みたいな空間を、面白そうな一冊を探し求めて歩くのはちょっとした冒険のようで楽しかった記憶がある。
7/11/2025, 4:31:08 AM