紅林眞叶

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踊りませんか?


今日は舞踏会の日。
英国でも伝統ある我が一族は、毎週のように舞踏会が開かれていた。
貧富の差が激しく、金持ちは毎日旅行に出掛けているが、貧しい人々は一生懸命働いていても1日暮らしていけることがやっとだった。


そんな状況下の中で、心から舞踏会なんて楽しめるはずがない。
皆が音楽に合わせて踊っているなか、私は椅子に腰をかけてその様子を見ていた。
「ご一緒に、踊っていただけませんか?」
そんな私に声をかけてきたのは、背の高い男性だった。
「いえ、私は…」
答えを迷っている私に、男性は気遣ってくれたのだろう。
「では、庭園で星空を見ませんか? 今日は天気がいいので、よろしければいかがですか?」
「……ご一緒させてください」


庭園に出ると、星は綺麗に瞬いていた。
「綺麗ですね…」
「あなたの方が、何倍もお綺麗ですよ。王女」
「いえ、そんなこと…」
「私の人生の中で、一番輝いている。あの星空のように」
「ふふ、お上手ですね。でも、ありがとうございます」
「次の舞踏会でも、またお付き合いくださいますか?」
「ええ、もちろんです」
私と彼は、再び満天の星空を見上げた。

10/4/2022, 12:32:45 PM