肩にある重みに痺れが出て、青年はゆっくりと目を開ける。重い方に視線を送ると恋人が寄りかかり、定期的な上下の動きをしていた。
青年は思考をめぐらせる。彼女が帰る前に疲れに負けてベッドにダイブしたところまでは思い出せた。
時計を見ると自分が意識を手放してから、数時間が経っていた。恐らくその後に彼女も帰ってきて、同じようにベッドに飛び込んだのだろう。
青年は体勢をずらして、起こさないよう最新の注意を払いながら彼女の頭を枕に乗せる。定期的な吐息を見るに、起きる気配はなくて青年は安心した。
すいよすいよと眠る恋人の表情はあどけなさも残っていて、でもその唇は大人っぽさも感じられて青年の心臓は高鳴った。
ほんの少し前まで、ここは静寂に包まれた部屋だった。
彼女の寝息。
青年の心臓の音。
本当は音のないはずなのに、内側から音が鳴り響く。
青年は腕を伸ばして彼女を抱きしめる。
余程疲れているのか、起きる気配はない恋人。
抱きしめているうちに、青年の心臓は落ち着きを取り戻していく。すると愛しい温もりと共に睡魔が襲ってきた。
青年は抵抗することなく意識を手放す。
そうして再び、恋人たちの寝室は静寂に包まれた。
おわり
一三六、静寂に包まれた部屋
9/29/2024, 12:17:26 PM