遅れましたが、光輝け、暗闇で 手放す勇気 まだ知らない世界 まって どうしても… です
光輝け、暗闇で
「どうかしましたか?暗い顔、してますけど」
よく行くカフェでコーヒーを飲んでいると、仲良くなった店員さんに声をかけられる。
「暗い顔、してますか?」
確かに悩み事はあるけれど、暗い顔をしているとは、自分では思わなかった。
「ええ。それに、ため息吐いてましたから」
「え?」
思いもよらぬ言葉にハッとすると
「コーヒーを飲んでホッと一息。ではなく、ハァってしてましたからね」
苦笑いされ唖然とする。
「大丈夫ですか?良ければ話、聞きますよ」
店員さんの優しい声に促され
「…仕事のことで悩んでて」
僕は口を開いた。
「なるほど、そうなんですね」
一通り話し終えると、店員さんは顎に手を当て何やら考えているような素振りを見せる。そして、ニコッと笑い
「光輝け、暗闇で」
呪文のような言葉を発する。
「は?」
わけが分からずポカンとしていると
「どうしていいかわからず、暗闇の中にいる。って言ってましたよね。けど、そんな暗闇の中にいても、何とかしたい。という光は灯っている。光は暗闇の中ほど、光輝きます。もっともっと光を輝かせてください。きっと、暗闇は光に包まれ、見えなくなりますよ」
そう言って目を細める。
「そう…そうですね」
店員さんの言葉に、沈んでいた気持ちが軽くなる。
「ありがとうございます。やる気が出てきました。コーヒー、おかわりお願いします」
「はい。お待ちください」
店員さんの言葉に励まされ、頑張ろうと思うのだった。
手放す勇気
「いつまでも取っておいてはダメだ。…ダメなんだ」
俺は今、ある本を片手に苦悩していた。
「これがあると、つい頼ってしまうのは目に見えているんだから」
その本があると楽ではあるが、自分で考えることを放棄してしまう。
「今度は、自分の力でクリアするんだ」
その本は、とあるゲームの攻略本。昔、攻略本を見てクリアしたゲームが再販売されることになり、内容を忘れているし、もう一度遊んでみようと購入することにした。そして今度は、攻略本を見ずにクリアを目指そうと決めたんだ。
「手放す勇気を持たないと」
何度も何度もお世話になり、ボロボロになった本。何となく捨てられずにいた本を、俺はそっとゴミ箱に入れたのだった。
まだ知らない世界
「なあ、何がいいと思う?」
親友に
「相談がある」
と居酒屋に呼び出され、相談内容を聞いたのだけれど…。
「それ、何で俺に聞くんだ?」
俺はテーブルに肘をつき、ため息を漏らす。
「ん?オマエなら答えてくれそうかな。って思って」
「あのなぁ…」
彼女への誕生日プレゼント。何がいいか?なんて相談されても、彼女がいたことがない俺に聞くなんて、見当違いもいいとこで…。
「彼女いない歴=年齢の俺には、まだ知らない世界だぞ?聞く相手間違えんなよ」
そう言うと、親友は
「ごめん」
と苦笑したのだった。
まって
「まって、本当にまって。これって夢じゃないよね」
友達と一緒に出かけたショッピングモール。みんな行きたい店がバラバラなので、お昼まで別行動にしよう。ということになり、好きなお店を見ているとき、片思い中の彼を見つけたのだ。
「こ、こんにちは」
「あ、こんにちは。こんなとこで会うなんて偶然だね」
勇気を出して声をかけると、彼はニコッと笑ってくれる。
「1人?」
「うううん。友達と来てるんだけど、お昼まで別行動なの」
「そうなんだ。買い物楽しんでね」
そう言うと、軽く手を挙げ歩き出す。
「…夢みたい」
普段、なかなか話せない彼。今度からは、恥ずかしがらずに話しかけよう。と思うのだった。
どうしても…
「どうしても…。どうしても聞いてほしいことがある」
「…えっと…何?」
俺は今、好きな子を目の前に、想いを伝えようとしていた。
「急に呼び出してごめん。けど、これだけは言わせてください」
目の前にいる彼女は、少しイヤそうに目を伏せている。
「俺は、あなたが好きです」
「え?」
俺の告白に、彼女は伏せていた目をこちらに向ける。
「え?うそ?でも…」
戸惑う彼女に、俺はもう一度
「あの噂はうそで、俺はあなたが好きです」
素直な気持ちを告げる。
「どうして、俺に彼女がいる。なんて噂が広まったのかわからない。けど、あの噂はうそです。そのうそのせいで、本当に好きなあなたに誤解されるのはイヤなんです。あなたが俺を、何とも思っていなくても」
彼女に笑顔を向けると
「話してくれてありがとう。私、諦めなくていいんだ」
彼女はうれしそうに笑ってくれる。
「…それってもしかして」
「はい。私もあなたが好きです」
彼女に迷惑かも。そう思いながら伝えた言葉。言って良かったな。とホッとしたのだった。
5/20/2025, 9:31:33 AM