蓼 つづみ

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その水面は、灰青の空を一点の歪みもなく映す。
水は息を潜め、世界の気配を抱え込んで、動かない。

石畳の小径も、屋根の端に残る霜も、
枝先の影も静かに反転させる。
遠くの山影は眠るように澄み、
松や椿の緑は冷たい光に凛と立つ。

光も影も、過去も、
今ここにある一瞬も、
すべてが鏡の上に重なる。

静止した水の上に、
世界の輪郭だけが、
凍りかけの冷気を帯びて残る。

水面は微動だにせず、
そこに触れた者の存在を反射し、
記憶の余韻までも宿す。

足音の残像、
過去に咲いた花の色、
凍てついた時間の微かな呼吸。

その鏡の中、果てを見ると、
答えは凍り、思考が沈黙する。

そのなかに自分をみつけるが、
そこから何も掬えない。

題 凍てつく鏡

12/27/2025, 1:49:18 PM