三日月

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冬休み

 「冬休みになったらおばあちゃんの家に行くことになっていたけど、どうしても行きたくなかったからバックれてやった」

 そう答えたのは、まだ十代の|友香《ともか》。

 お母さんのおばあちゃんの家とはいえ、今迄ずっと会っていないのだからそんな所に行きたくなんか無いのは当然のこと。

 捜索願いが出されてるのかどうか分からないけど、今のところ帰る予定は無いという。

 原因は学校にも家にも自分の居場所が無くて窮屈だったこと、そして、母子家庭だったとはいえ、高校生の|友香《ともか》のバイト代迄母が取り上げることに対して苛立ちを覚え、そのせいで学費が払えず退学させられそうになったことが引金となったのだ。

 もうどうにでもなれという思いから家を出た友香は、最初は友達の家に泊まらせて貰っていたものの、ずっとそれが続けられる訳もなく、気が付けば寝床を提供してくれる人を求めSNSでハッシュタグに神待ちと書き込むようになる。

 帰る場所を失った友香に出来ることは他に思いつかなかったので、そんな日々を繰り返していたけれど、エッチ目的で様々な立場の男性が泊めてくれるので、寝床に困ることは無かった。

【何でもします泊めて下さい、都内で彷徨ってます】

【なら家来る?】

 こうやって、友香は住まわせてくれた人のエッチの相手をしながら生きるようになっていたけど、それでも家にいた時よりはマシだったらしい。

 だから、デリケートゾーンが痒くなることや、体調不良になることにも我慢できたという。

 ところがそんなある日、熱っぽい状態のままフラフラと夜中に街を徘徊していると、支援団体の女性の人が声をかけてくれて友香を保護してくれたのである。

 そんな友香は今は支援団体に支えられながら、同じ境遇だった人達と一緒にシェアハウスで生活をして生計を建てており、昼間の仕事にも就職し、あと少しで通信教育で高校も卒業予定らしい。

 冬休みの出来事は良くないことだったけど、友香にとって支援団体との出会いは救いになったようなので、「これからも友香を応援して行きます」と、支援団体の女性は力強く語ってくれた。

 








 

 

12/28/2022, 10:46:39 AM