川柳えむ

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 子供の頃はよく一緒に遊んでいて、手を繋ぐことも日常的なものだった。私はあなたが好きだったし、一緒にいて楽しかった。
 大きくなるにつれ、やるべきことがだんだんとわかって、私達の関係は昔のように純粋なものじゃなく、お互いたくさんの物を背負った重い物に変わってしまった。

 久しぶりにちゃんと向き合ったパーティーで、そっと手を引かれ、二人でこっそりバルコニーに出た。
「踊ろう」
 そう言うあなたの手をぎゅっと握る。
 流れてくる音楽に合わせ、あなたの動きに身を任せ、踊る。
 久しぶりに繋いだ手から温もりを感じる。楽しい時間が過ぎていく。
 二人手を繋いで、そして――

 バルコニーから、私は宙を舞った。
 繋いだ手が離れた。


『手を繋いで』

12/10/2023, 2:13:35 AM