美佐野

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(星に包まれて)(二次創作)

 ピートが荒れ果てた牧場に来て、3年と半年が経った。
 その夜、ピートは一人で裏山の山頂にいた。3年半前、初めてこの地に足を踏み入れた朝のことは、今でもよく覚えている。たった一人でこんな広い土地をどう切り盛りしていいのか、途方に暮れた。だがすぐに出荷業者の青年が街に連れていってくれ、皆の歓迎を受けて少しだけ安心したのだ。
(まずはカブを育てたんだっけ)
 最初は畑9枚を耕すだけでへとへとになったものだ。それに、芽吹いたら中央の苗にはじょうろの水やりが届かないことも知らなかった。その分、雨の日は最高な気分だった。
(鶏を飼って、家を大きくして……)
 秋と冬は、鶏の卵だけでは資金が心もとなく、裏山のキノコや洞窟の薬草を必死に集めたっけ。そうこうしているうちに、季節が廻り、最愛の人と結婚し、そして――。
「あなた」
 妻の声に振り返る。桃色の髪がふわりと揺れた。花屋の娘ニーナ。ピートの最愛の人。
「お父さんに認められて、よかったね」
「うん」
 今日は両親が牧場の様子を見に来る日だった。もし父に認められなければ、牧場から放り出されていただろう。妻と、まだ幼い息子を残して。だが父はピートを認め、ピートの家族を祝福し受け入れてくれた。
 ふと空を見上げる。満天の星空は、別世界のようにも見えた。と、ピートの隣まで歩みを進めたニーナが、ぴとりと身を寄せてくる。そっと抱き寄せて、二人で星空を見上げた。星に包まれて、二人きりの時間が流れる。これまでの牧場生活で、いいことはたくさんあったけれど、一番は彼女と一緒になれたことだ、とピートは思っている。すると不思議なことに、ニーナもこちらの目を見つめて、ぽつりと呟くのだ。
「幸せよ、あなた」
「うん、僕も」
 今頃家では両親が子供たちを寝かし付けているころだろうか。子供たちに良い夢がありますようにと願った瞬間、応えるかのように星が一つ流れ落ちた。

12/30/2025, 11:02:25 AM