円満離婚した元ダンナは、私の10コ上だった。
そして、いまの私のカレシであるスバルくんは、私の10コ下。こんなの、もちろん狙ったわけじゃないんだけど。
離婚前の私は。元ダンナと同じものが見たい、と年に似合わない背伸びをして、それで空回りばかりしていた。
だからスバルくんが、私との年の差に、要らない焦りを感じている、その気持ちが、わかりすぎるくらいにわかってしまうのだ。
でもね、スバルくん。私はあなたに、そんな無理はしてほしくない。彼に、そのままでいいよ、って言いたいけれど、それを伝えることの失礼さも重々承知している。
なら例えば、神様にでも頼んで──スバルくんを待って、私の時だけが止まってしまう、そんなことが起これば、私たちはすれ違わずにいられるのだろうか?
「町中華特集かぁ。最近、多いなー」
テレビのリモコンを片手に、スバルくんが言った。
結局、今日もこうしておウチデートになってしまったのは、私が体のだるさを訴えたからで。20代のスバル君はまだ若いんだし、もっと外にお出かけしたいだろうなぁって思うんだけど。
こんな私に付き合わせてしまって、いいのかな。テレビ画面に映る、中華屋さんを営む老夫婦を眺めながら、罪悪感と、それと真反対の、彼に想われ大事にされていることへの嬉しさが、私の内側でせめぎ合っていて……。
「12歳年上の姉さん女房。ふーん……」
その姉さん女房なおかみさんのコメントを聞いたスバルくんが、言った。
「俺もこの境地に、早くたどり着かないもんかなぁ……出来れば、あと2年くらいで」
「んん? この境地、って?」
「このご夫婦さ、82歳と70歳で、でもそんな年の差があるなんてパッと見、誰もわかんないじゃん? いまの俺だとどうしても、ユウナさんと比べてガキでしかないから、」
「あと2年で、って……フフッ。アハハハハッ」
「なっ……笑わなくたっていーじゃんか!」
スバルくんの、ムッとしたカオ。
でも、ごめんね。だってさ……。
「やだ。そんな急に年とりたくないよー」
「や、だから、そういうことじゃなくて! ユウナさんはそのまんまで、俺がもっと、」
「それもやだ。スバルくんもそのまんまでいい、そんなにすぐに、オジサンにならないでよ」
そっか……そういうことなんだ。
私とスバルくんはいつか、おばあちゃんとおじいちゃんになって、年の差が10コもあるなんて、誰にもわからなくなる。私とスバルくんの間に横たわる年月は、それこそ時間が解決してしまうってこと、じゃあ、それならば。
神様にはやっぱり、『時を止めて』欲しい──私だけじゃなくて、二人一緒に。この瞬間、スバルくんがスバルくんのまま、そして私も私のままでいる、いまという時間を、もっと大事に、ゆっくりと味わいたいから──。
……なーんて、ね?
でも実際のところ、アンチエイジングにはそこそこ必死にならないと、いろいろとマズいかもしれない。この美少年顔はきっと老けにくい……どうするよ、私?!
11/6/2025, 2:05:06 AM