イオリ

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過ぎ去った日々

 子供の頃の過去は、昨日しかなかった。大人になると、そこに後悔が上積みされていく。もちろん、いい思い出も多少はあるが。

 ただ、明日はもっと高く飛ぼう、速く走ろうと思ったら、そんなものはなんの意味もない。

 今まではどうでもいい。前だけを見よう。間もなく春だ。全ての雪が溶ける。だから尚更そう思う。まあ正確には、そう思いたい、思えたら、かな。

 飲み込んだコップの水が、全て体外に流れるわけではない。一部は体内に残り、血肉と化して僕自身を作っていく。それこそ良い水も悪い水も両方だ。多少の悪い水でも、体は問題なく生命を維持しようとする。

 心のほうは。

 やはり心もそうなんだろうね。水が不味かったという記憶は、捨てようと思ってもなかなか捨てきれない。脳みそにこびりついて、そのうち錆びて剥がれなくなる。それでも前を向こうとする心は不思議と無くならない。

 結局、そういうものなんだ。生きるって。仕方ない。錆を落とそうとするのも疲れた。そのまま行くしかない。

 

 

 

3/9/2024, 11:30:08 PM