語り部シルヴァ

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さよならを言う前に

人を助けたいと思ったその時に体が動くなんて嘘だと思っていた。
気がついたら僕は車とぶつかって吹き飛ばされていた。
周囲がザワつく音と僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。

君は無事そうだ。よかった。
悲しそうな顔をしないでくれ。これが本望だ。
自分の命に変えても君を助けたい。
本能的に動けて良かった...

でもこれはちょっとまずいかも...
意識が薄れてきた。
瞼が重くなってくる。寝たくないなあ。
痛みを感じていたはずの体が痛くなくなってくる。

あー...最後に伝えなきゃ...
「し...あわ...せ...に......」
格好つけて言いたかったセリフ。
恥ずかしくてずっと伝えきれずにいたセリフ。

ごめんね。さよなら。
抗っていた瞼の重みに流され目を閉じた。

語り部シルヴァ

8/20/2024, 1:57:41 PM