せつか

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部屋の片隅で、二匹のくま🧸が寄り添っている。
互いの肩に凭れて、頭と頭をくっつけあう二匹のくまのぬいぐるみ。
互いの髪と目の色を似せて作られた〝彼等〟の姿は、見る度に胸に温かなものを呼び起こす。

部屋の灯りに照らされて壁に写る二匹の影。
くっついて、境い目の無い影は二匹で一つの形になって、一回り大きな生き物になっている。

――あぁ、そうだ。
くまを見つめる瞳がふわり、と柔らかく細められた。
私達はこうして、ある時は肩を並べて、ある時は背中を預けて、一人でいる時以上の力を発揮してきた。
大切なものを守る為に。
大好きなものを守る為に。
一人では出来ない事も、隣に彼がいるから出来た。
一人では不安な時も、隣に彼がいたから安心出来た。
今、こうしていられるのは、いつも、いつでも、隣に彼がいたからだ。

手を伸ばし、金色の毛並みをそっと撫で付ける。
心地よい手触りに、思わず唇が綻ぶ。
「ありがとう」
いつも隣にいてくれた彼に向けて。
物言わぬ彼等に向けて。
そっと呟いた言葉には、万感の思いが込められている。

「·····どういたしまして」
「!?」
声に驚き振り向くと。
幸せそうな顔で寝息を立てる男の姿があった。


END


「部屋の片隅で」

12/7/2024, 3:08:12 PM