うどん

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「初恋いつやった?どんな子だったか覚えてる?」

何かの話の流れでそんな話題になった。

「小学生の頃、同じクラスの女の子で、窓際でいつも静かに読書してる感じの子やったなぁ。時折本読みながらにこ、て笑顔になるんが可愛くて、ドキドキした覚えがある」

不思議と教室に入ってくる風の温度や香りまで思い出した気がする。

「へぇ〜甘酸っぱい思い出やね」

「お前は?人に答えさせるだけやなくて言えや」

「俺はなぁ。信じてくれへんかも知らんけど、お前と初めてバーで会うた時や」

「アホぬかせぇ。んなはずないやろ。あの頃お前付き合うてる相手いたやん」

「やから、あの時お前に会うた時、お前に一目惚れしてもうて、それでそれまでのは恋でも何でもなかったんやて気づいたんよ」

「ひっっどwwそんなこと言われても嬉しくありませぇん!」

軽く返しながら、じりじりと耳が熱くなってくるのを感じた。
なんやこれ、恥ずかし。本気にしてるわけやないのに、もしもそれが本当なら、なんて考えてしまいムズムズする。

「ほんとのことやから。これから信じてくれるまで色々話させてな」

あの日バーの扉を潜るようにしながら入ってきたこの男のことを、鮮明に思い出してしまった。
こちらを見て一瞬目を見開き、微笑んだ顔を。

それが俺に惚れた瞬間で?それが初恋やと?


「はっっっず」


照れる俺を見て、目の前の男はあの日みたいに笑った。


【お題:初恋の日】

5/7/2024, 1:23:03 PM