saku

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火傷したことがある。大火傷。
治るのに何年もかかり、手術も何度も繰り返した。
その経験から得たことはたくさんある。痛みはこうして流すといいよ、その瞬間は我慢だね、このムズムズは治る時の感覚なんだ、こういう世界もあるんだよ、云々。

でも私にとっての一番の収穫は、肉体が燃える時の感覚を得たことだった。
別に衒っているのでも、何かを喩えているのでもない。
率直に、自分の体が燃えていくのはどんな感じか知れたのは、とっても大きな経験だった。

高熱で外側が溶け、なかみが露わになった時、すごい力で自分のシン…芯、真、神、が身体の外へと引っ張り上げられた。

上から見える。はっきり見える。
夕暮れ。
通りすがりのおじさんが何かの気配に振り向いた。
そしてすぐに、その暗がりに向かって駆け出した。あ、助けるんだ。。

気がついたらその人に背負われて、私は湯気の出る指先で、自分の家がある方向を差していた。
痛い。知ってる痛みの中で一番痛い。
こういう時は泣くんだよね。ええと…
うわーん、うわーん。
その瞬間、恐怖と絶望が全身を貫き、痛みはさらに強く深く突き刺さった。

あの時一回燃えた。その後に行く道が完全に変わった。リセットした感じ。
その過程で苦しんだり悲しんだりという経験は、要するにオプションなんだって分かってしまった。
でもリセットするたび毎回ほんとに燃やしてたら、文字通り身が持たない。
それも分かった。身をもって。

命を肉体というなら、必ず燃えてなくなる。
命をシンというなら、決して尽きることはない。
自分をどちらと捉えるかは、自分で決めていいんです。

9/15/2023, 6:03:37 AM