#何でもないフリ
家が隣で、親同士が仲良し。
生まれた病院も一緒で、小さい頃から家族ぐるみで
旅行に行った事もある。
少女漫画かよ、って思うほど
俺とあいつはいつも一緒だった。
可愛くて、優しくて、しっかりしていて。
あいつの事を好きになるのに時間はかからなかった。
テストの点数、嫌いな教師、親への不満。
あいつには何でも話せたし、
あいつも俺に何でも話した。
でも1つだけ。恋愛話だけはあいつにできなかった。
それなのに、あいつは俺に恋愛相談をする。
あいつの好きな奴は俺の親友だった。
好きな奴と仲の良い、自分の幼馴染。
恋愛相談をするには完璧な相手だった。
けれど、あいつの恋愛が上手くいかない事を
俺は知っている。
親友には俺と同じように昔から好きな幼馴染がいた。
親友の幼馴染も、親友の事が好きなようだった。
親友の事を話すあいつの顔が悔しいくらいに1番可愛い。
その顔、俺がさせたいんだけど。
そうカッコよく言えたらどれだけ良いのだろう。
漫画のような設定の俺とあいつ。
この先の未来が漫画のようなハッピーエンドだったら。
女々しい事を頭の中でぐるぐると考える。
ああ、情けない。
それでも俺は、頼りにされている事が嬉しくて
心が傷ついている事に無視しながら
何でもないフリをして今日も恋愛相談に乗る。
12/12/2023, 8:48:05 AM