天津

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10年後の私から届いた手紙

パサリという音がして、スマホを見ていた私は布団から身を起こした。音は机の方角だったので向かうと、机の上に封筒があった。上の棚から落ちたのだろう。封筒に見覚えはないが、郵便物やチラシをいつも棚に無造作に置いていたので、なんら不思議ではなかった。
封筒を棚に戻そうとして、ふと宛名のないことに気づいた。そして、封筒に継ぎ目がないことも気になった。私は俄然興味が湧いて、すぐさま封筒の短辺を破った。
中には、ごくシンプルな便箋の手紙が2枚あった。
1枚目には、冒頭に『本信書が20xx年のあなたによって書かれたものであることの証明』と書かれていて、いくつかの事実の列挙があった。私は十分に納得して2枚目を読み始めた。
2枚目の手紙には、いくつかの指示とその理由が箇条書きで並んでいた。いずれも納得できる内容であり、従えばよりよい未来へ到達できることは想像に難くなかった。私は深く頷いて手紙を棚に貼り付けた。
布団に戻ろうとすると、再び背後で音がする。振り返るとまた封筒が机上にある。しかも先程開封したものと同じ見た目の封筒だ。直前に棚を確認していたので、そこにまだ別の封筒があって落ちてきたなどとは思えなかった。このことは手紙の信憑性を裏付けるようだった。
出現した2つ目の封筒を開封する。
今度は手紙が1枚だった。冒頭には『警告と訂正』と書かれていて、「何番と何番と何番についてきちんと実行するように、何番に関してはやはりこうするように」とあった。
なるほど不具合が生じたのだな。
そう思っていると、頭頂にカツンと当たるものがあり、それもまた同じデザインの封筒だった。開封するとまた警告と訂正の手紙が入っており、読み終えるとまた頭上から封筒が降ってきた。私は天井を見つめ、ため息をついた。
なんだ、未来の私もよく分かってないんじゃないか。
私は全ての手紙をかき集め、ゴミ箱に捨てた。

2023/02/16

2/16/2023, 8:49:33 AM