お題 「太陽の下で」
はぁ…、はぁ…、
たとえ息が切れても、走らなければいけない。
彼女の手を離さないように力強く握る。
後ろから聞こえる幾つもの足音は、俺たちの恐怖を唆った。
「もう…限界っ!」
彼女が辛そうに言葉を発する。
裸足で走っているから、足はボロボロだ。
しかし、止まったら捕まって永遠に太陽を拝むことは出来ないだろう。
指切りげんまんした約束を彼女の為に叶えてあげたい。
「やっと、外に出れる…!」
上を見上げれば、太陽が僕達のことを照らしていた。
初めて見た太陽は、暖かくて包み込んでくれているようだ。
見ている場合じゃなく、走ろうとした時彼女が座り込んでいる事に気付いた。
「何故か力が入らないの。先に行って?」
悲しそうに笑う彼女を、僕が置いていける訳が無かった。
彼女に手を貸そうとした時、囲まれていることに気付いた。
もう、僕達は鳥籠の中に戻ることしか出来ないのだろうか。
「君達は太陽の下では生きられない。」
彼女は、何故か意識を失ってしまっていた。
僕もくらり、と目眩がして、力が抜けていく。
最後に聞いたその言葉の意味が分からなかった。
僕達が“吸血鬼”と知ってしまうまで、あと…。
11/25/2022, 10:02:49 AM