私は、いつか、自分を誇らしく思えるようになりたい。
「あ!」
先生の大きな声に皆目線を向ける。
静かにはならない。
皆各々喋り続けたまま。
「ホームルームで言うの忘れてたけど、
自己紹介のプリント、明日までに仕上げてきてねー!」
「はーい!」
教室には30人いるのに、返事をするのは2、3人だった。
自己紹介、か。。。
正直、私に自己紹介できることはない。
語れるほど詳しい趣味もない、特技なんてもってのほか。
考えすぎだ、真面目すぎだ、もっと気楽に書けば良い。
そうは分かっているけれど、やっぱり考えてしまう。
私って、こんなに色のない人間だったっけ。
「あ。」
パンッとタンッが混ざったような音がした。
斜め後ろの席の子がボールペンを落としたようだ。
「はい。」
隣の子がそれを拾い、渡す。
「ありがとう。」
その一連の流れを見て思った。
よく他人のために無償で労働できるな、と。
こんなことを言うと私の性格が歪んでいることが
バレてしまうが、もう言ってしまおう。
厳密には、無償、ではないかもしれない。
他人から見た自分の評価を下げない、という対価と
引き換えに労働していると言っても良いだろう。
しかし面倒くさいことこの上ない。
拾う行為自体もそう。
人からの評価を気にして行動するのもそう。
コスパが悪い。
と、言いつつも私も目の前でペンが落ちたら拾うがな。
ただ内心面倒くさいな、どうしてこんなことをしなければならないのだろうと愚痴を吐きつつ拾っている。
極度の面倒くさがりで、自己中。
いつだって他人より自分優先で、家族思い、友達思いなんて概念は存在しない。
それでいて人のことを僻んでばかり。
変わりたいけど、変わる努力の過程で失敗するのが怖くて変われない、臆病者。
それが私の色。
汚い色。どす黒い色。私の色は、私が一番嫌いだ。
日に日に理想の自分から離れていく。
日に日に自分が嫌いになる。
毎日自分の嫌いな部分を見つけ続け、感じ続けている。
なかなか苦しい生き方だ。
毎日学校に来ると、いつだって他人と自分を比べて落ち込んでしまう。
そんな自分も大嫌い。
とにかく自分が嫌いで仕方がない。
いいところなんてあるわけがない。
こんなに出来損ないの子どもで、親に申し訳ない。
ある日突然言われた。
「ほんと研究熱心だね。
気になるところはとことん調べ尽くして、
試し尽くして、納得行くまでこだわる。
そこが特技と言うか、良いところだと思うよ。」
そんなわけがないと思った。
誰しも好きなことのためならいくらでも調べられるだろうと。
自然にこだわり続けてしまうものだと。
そう言ったけれど、
「それもそうだが、あなたは桁違いだ。」
と言われてしまった。
私にとっても皆にとっても当たり前だと思っていたし、なんなら今でも思っている。
けれど、そのこだわり、執着の強さは人並みより
ほんの少し上かもしれないと最近思ってきた。
それがいい方向へ働くこともあれば、悪い方向へ行くこともあるだろうし、むしろ悪い方向へ行くことのほうが圧倒的に多いとは感じるが。。。
けれど、自分にいいところなんて一つもないと今でもそう思ってきたなか、
邪魔になることが多すぎるが、人よりも少しだけ
優れていることがあるかもしれないと思うと、
少しだけ気分が明るくなった。
私は、いつか、自分を誇らしく思えるようになりたい。
8/16/2024, 5:37:38 PM