マサティ

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泣けない3人

僕ら3人は、教室の中でちょっと浮いた存在だったのかもしれない。
小学校の運動会で、クラスの応援もせず鬼ごっこをしていた。
音楽の授業では一生懸命歌うふりをして口パクだった。
間違った方法ではあったが、僕らは早く大人になりたかったのだ。
2人だったら注意されて直されたかもしれない。
どちらか1人が裏切って、周囲に同調していたかもしれない。
しかし僕らは3人で、そろってふてぶてしい子供だった。

5年、6年生とそろって3人は同じクラスだった。
特に大きな出来事もなく、何となく卒業式はやってきた。
先生もクラスメートも感極まった表情をしていた。
最後は教室に集まり、先生からのお話があった。
先生は話始めのタイミングでラジカセをカチっと押して、しんみりする音楽を流し始めた。
僕らは目配せをし、手で口元を押さえ笑い出しそうなのを我慢した。
先生のお話が終わると、僕ら3人以外のみんなが涙をこぼしていた。
流石にちょっと困ったなーと思っていると、先生にポンポンと肩を叩かれた。僕ら3人だけが肩を叩かれた。
「最後くらい素直になりな」
そんなこと言ったって先生、仕方ないものは仕方ないんですよ。

3/18/2024, 8:17:47 AM