霜月 朔(創作)

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私の名前


暗い暗い闇の中に、
私は独りでいました。
余りに暗いので、最早上や下さえも解らず、
私は途方に暮れていました。

見渡そうにも何も見えず、
歩こうにも前が分からず、
叫ぼうにも声が出ず、
私は立ち尽くすしか出来ません。

闇の中に、黒い霧が立ち込め、
私の身体を覆っていきます。
真っ暗な闇の中で、
黒い霧が体の表面だけでなく、
内側へと入り込んできました。

不思議と苦しくはありませんでした。
このまま闇と同化してしまえば、
孤独に怯えることからも、
為すべきことが分からない焦りからも、
解放される、と思いました。

ふと、
何処からか、声がしました。
それは知らない言語を聞いているかのような、
聞き覚えのない文字列に感じました。

何度も繰り返し聞こえる謎の言葉。
繰り返し繰り返し。
闇に閉ざされた場所にいる私に、
響いてくる言葉。

ああ。あれは、
私の名前なのだ。

そう気付いた時、
闇の中に一筋の光が見えた気がしました。

7/20/2024, 8:08:05 PM