『宝物』
 キラキラと輝いていた。
 太陽にかざせば地面に綺麗な模様が出来て、それを独り占めしたかった僕は"宝箱"を用意した。
 無くさないように。
 奪われないように。
 それを大切にしまい込んだ。
 あの頃の僕には、それがとても価値あるものに見えたんだ。
 ……今なら分かるよ。
 こんな物に価値はないんだって。
 どんな物にも価値はないんだって。
 僕も、君も、誰も、何も。
 みんなみんな……どうでもいいんだって。
 "ガラクタ入れ"を覗き込む。
 汚れてくすんだガラス片が、僕の顔をぼんやりと反射した。
11/20/2023, 6:28:26 PM