H₂O

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0からの


とある一点からゆっくりと下に弧を描いて、また始まりへと戻る。永遠を思わせるそれをそっとなぞると、0は笑ってこう言った。
君にも0をあげよう。その名の通り、何もない。知識も、欲も、常識も、感情も、何もないそれを君にあげよう。
だから、君の好きなようにしていいよ。どんな奇抜な発想だって、0には大歓迎さ。常識なんて誰かが決めた枠に収まらなくたっていい。誰も思いつかないような、不可能だと思えるような考えだって君ならきっと可能に変えられる。
それは0からの贈り物だった。何もないそれを受け取って、自分なりにいろんなことをした。
時にはそれが1になって、1000になって。
時にそれはマイナスになって、また0へと戻っていった。
何もなかったそれは、いつしかいっぱいの思い出に満たされてゆっくりと眠りにつく。
目が覚めて、おかえり、と0の声が聞こえた。そして、いってらっしゃい、と笑った。
そうやってまた、0は私に命をくれた。

2/21/2023, 1:08:09 PM