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手形がはりついている
髪の毛が埋まっている
人影がやきついている

夕にはいたんだがね
いましがた居なくなった、
と云う人と先刻合ったよ

ああ月の話さ
あの光を見ているとどうもね
比喩の原罪という
念頭を去らぬよごれのことを思い出す様だ

たっぷりあるのは
総じて悪だね
だから光とは
無窮を解釈しようと奔るのだよ

善くないね
じつに善くない

時空は膨大だ
膨大な悪だ
その悪に追いつこうとすれば
「とわ」とのたまう唇のひびわれだ

夜の赤い裂け目に指の掛かるとき
喉を悲鳴が動かす仕方に我らは通暁している

この世でもっとも怪我してきた動物を知っているかい

猿だよ

いまも洞穴におりながら
醒めやらぬ飢えの寝床にもぐる毛むくじゃらの
背筋に生え揃った記憶の草原

おまえ
孤独か

淋しい犬歯よ

おまえの裔はな
おのれの腹を割ったなかから
機能せぬ臓物を取り出し、計り、名づけるほど暇だ

おまえ
報われはしなかったな

猿よ
始まりは太初の言ということになっている

神は初めからよく喋るが
おまえはすっ転び、生傷をこさえてきた
なにがなにやら
わからないな


#イブの夜

12/24/2024, 3:00:35 PM