灰色の空からは今にも雨が降りそうだ。
傘は持っていない。
頬の上に滴が流れる。
橋の上には雨宿り出来るところはない。
伸び切った袖で顔を拭うが、
灰色のコンクリートにひとつふたつ黒いシミが
出来たかと思うと全て染まるのは早い。
溝の様だ。
叩く様に強い雨と水を含んだ前髪で
あまり前は見えない。
丁度いい。
この後、ご飯の約束があるのだ。
早く済ませて行こう。
袋から長ネギをひとつ川に投げる。
ポチャン
次は大根かな。
ポチャン
次は…
ポチャンポチャン
ポチャンポチャン
袋が軽くなっていく
ポチャンポチャンポチャンポチャンポチャン
リズム良く投げるのがコツ。
あ、最後だ。
袋の中からボールを取り出した。
ぬるっとした感触が気持ち悪い。
暖かった時は良かったのに。
ボチャン
早く帰らなくては遅刻してしまう。
#もう一つの物語
10/29/2022, 2:54:48 PM