「今日は晴れ、ところにより雨です」
ラジオの天気予報が告げる。
「雨は○△地区、×◎◽︎地区、◎■▶︎地区で、宙時計◀︎時からと予想されており…」
僕は大きく伸びをして、ベッドから半身を起こす。
カーテンを開け、窓を開け放つ。
窓の外には、瞬く星空が広がっている。
「おそよう。良い夜だね」
お隣さんに届くように、大きな声でそう言って、僕はベッドから出る。
タンスを開けて、皮を着替える。久しぶりに着るものだから、節々に動きにくさを感じる。
体に馴染むようにと、僕はラジオのつまみを回す。
「ラジオ体操第一!」
ラジオから軽快な音楽が流れ出す。
僕はそれに従って、関節を回してみたり、腕を伸ばしたり、動きを確認する。
一通り動かして、軽く跳ねてみるところが、僕の一番のお気に入りだ。
体を動かした後は、テーブルに座って、ご飯を食べる。
いつものご飯が、この体にはやけに食べにくい。
ご飯を食べ終えたら、いよいよ今夜のメインの活動だ。
僕は虫取り網とバケツを担ぐ。
今日は、星狩りにピッタリの日だもの。星狩りに行かなきゃ
玄関の扉を開けようとしたところで、僕はふと気づく。
そういやお隣さんは、星が欲しいと言っていた。
僕は窓に駆け戻り(たった二本の肉製の足では、走るのも一苦労だ)、窓に向かって大声で言う。
「これから星狩りに言ってくるよー!場所はもちろん、◎■▶︎地区のいつもの空き地!君も予定がなければ是非おいで!」
それから僕は清々しい夜の空気を吸いながら、歩いて行く。満天の星が重たそうにキラキラ輝いている。
そのうちの一つが、チラチラと揺れたかと思うと、地面に向かって、スーッと落ちてくる。
もう降り始めた!僕は転ばないように急足で、目的地へ向かう。
いつもの空き地には、先客がいた。さっき声を掛けた、お隣さんの、君だ。
君も肉製の二本足で立ち、二本の腕に虫取り網を持っている。
こんな身体も、君にはよく似合っている。
「おそよう。もう降り出してるよ、急いで急いで!」
にっこり笑いかけてくれる君に僕は答える。
「おそよう、来てくれたんだね」
「うん!だって星、たくさん捕まえたかったし、君にも会いたかったから!会うの久しぶりだよね?」
「うん、百十年ぶりかな…僕も君に会いたかったんだ」
僕がそう口にし終わる前に、大粒の星が降り出す。
予報通りの雨だ。◎■▶︎地区による、流星雨。
君は、「降り出した!」と歓声を上げ、虫取り網を振り回して、次々と星を捕まえ始めた。
…僕の言葉はどうやら、最後まで聞こえなかったみたいだ。
でも、君の星に夢中なその仕草が、僕の胸を幸せにする。
「ねえ!雨あがっちゃうよ!早く早く〜」
君に呼ばれて、僕も虫取り網を取って駆け出す。
今日は星月夜、ところにより流星雨の日。
3/24/2024, 12:18:45 PM