「無色の世界」
「えーと、ではイメージカラーをお伝えします。
まず、ラップ担当のまりすくんは、赤ね」
まりす、と呼ばれた小柄なファニーフェイスの少年が神妙にうなずく。
いたいけで純真そうにみえて、ラップでは、誰もが認める実力者だ。
「ダンス担当の、ゆいとくんは水色、はるひくんは紺、まなかくんは青」
次々と、メンバーに割り振られたイメージカラーが発表される。
男性ユニットのデビューなど、ショービジネスの世界全体からすれば、日常のよくある光景だ。
砂つぶほどの数のユニットが毎日、産声をあげる。
その中で、どのくらいのユニットが生き残れるのか。
生き残った中で、どのくらいが3年後も人々の目に、そのすがたをうつしていられるのか。
こんな小さな芸能事務所だが、練習生期間を耐え抜き、やっとデビューまでこぎつけた。
いま、事務所がいちばん力を入れているユニットに、ぼくは選ばれた。
やっと、夢が叶う。
「……はい、以上!」
ぼくの名前は呼ばれなかった。
でも、ぼくは自分のカラーを知っている。
「みんな! みきおくんのことは残念だったけど」
社長がしんみりと言葉を続けた。
「彼のぶんも頑張っていこう」
「見守ってくれてるよな」
「当たり前だ。あいつの分も成功してやる!」
ぼくも、いっしょだよ。
ぼくのカラーは「無色」
終
4/18/2026, 12:27:43 PM