Episode.46 柔らかい雨
「今日も雨、か。
そろそろ来るのかな。」
ピンポーン____
「…はあい、やっぱり今日は来るんだね。」
「おう!なあ、今日は雨も弱いしコンビニ行かね?
美味いもん買って映画見ようぜ、俺の奢り!な?」
「気が利かないなあ…奢ってくれるならいいけどさ。」
去年隣に引っ越してきた友達の麗斗。
彼は、雨の日には必ず私の家に遊びに来る。
雨が止んだら少し寂しそうな顔をして帰っていく。
理由は分からない、聞いたこともないから…。
「____でさ…なあ聞いてる?ボーっとしてね?」
「聞いてるよ、夢の中で逆立ちしながらカバに乗ったん
でしょ?」
「だいぶ前の話だなそれ…」
「…ねえ、聞いてもいい?どうして雨の日には必ずうち
へ遊びに来るの?」
「んー…雨の日ってさ、用事がない限りわざわざ家から
出ねえじゃん?てことはよ、俺が遊びに来ない限りそ
の日は会えねえかも知れねえじゃん?」
「うん、うん…ん?つまりどういうこと?」
「あーあー!何でもねえ、綺音はほんと鈍感だよな。」
「ちょっと、もしかして馬鹿にしてる?」
カチ、カチ、カチ、カチ____
「なあなあ、俺ら高校生じゃん?恋バナしね?」
「麗斗っていつも急ね。
話題を出すってことは話したいことでもあるの?」
「実はさあ、俺好きな人いるんだよ!ビビった?」
「麗斗は知り合った頃から分かりやすいし、今更ビック
リすることなんてないけど。」
「ええー?冷たいなあ…。
…んで、綺音は?好きな人、いねえの?」
「…いるけど。」
「え、マジ?うわー意外だわ…それって誰なん?」
「麗斗」
「ん?どした」
「…っだから、麗斗だってば!」
「俺がどうし…た、…え!?」
「はあーっ…ほんと、鈍感なのはどっちなのよ。
…で?麗斗の好きな人っていうのは誰のことよ。」
「…綺音、が好き。」
「うん、知ってる。」
「は!?いつからだよ!」
「ふふっ、ふふふふ、まさかバレてないとでも思ってた
の?ほんと麗斗って面白いのね。」
「うるせえ!俺を馬鹿にしてんじゃねえ!」
ぽつん、ぽつん____
雨はもうあがっていた。
庭の葉に滴る水が柔らかい雨のようにぽつんと落ちる。
「ねえ、今日は帰らないの?」
「帰る理由なんて、もうねえだろ。」
11/6/2024, 3:19:08 PM