渚雅

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「───」

そう、言えたらどれほど良かっただろう。
たとえ何が変わらなかったとしても、己の中のその想いをあの人へ伝えられていたのなら。そんな今があったのなら、それは、もっとずっと……


そんな意味のない空想を今だ捨て切れず、過去を振り返っては変わらない後悔を慈しむ。言わばこれはただの自己憐憫。たられば、なんて今からでもなにかを行う勇気もない癖に。



「同窓会……」

参加する気はなかった。それでも、もう少し考えよう、とそんな珍しい気紛れによって、もう7日ほど机の上に放置されたその葉書。

隣合うひとつの二重線とひとつの丸でなにかが変わるというのなら。そんな風に勇気を振り絞って、卒業以来初めての顔合わせに一歩踏み出す。


(グループで、来るって言ってた)

就職に進学とバラバラの進路を志した割に、何故か細々と残り続ける文明の利器の中の微かな繋がり。ときたま意味もないやりとりが唐突に行われては沈黙を繰り返すあの頃のままの時間。それが後押しをしてくれるから。


「今回は、言おう」
『行かないで』

10/24/2024, 11:32:48 AM