『窓から見える景色』
窓枠で切り取られた、見慣れたグランドと青い空。
夏休み前の試験期間のせいで、いつもは騒がしいはずの敷地内はまるで眠っているような穏やかさだ。
「あれっ!林ー、まだ帰んないの?」
暑さでぼんやりとしていた耳に、よく響く声が聞こえる。
隣のクラスの町田である。
1年の時に仲良くなった友人の1人だ。
帰らないのではなく帰れないのだ。
ここは田舎にある高校で、自宅から自転車と電車を駆使して通学している僕にとっては、少なくともあと1時間後にしか来ない電車を待つしかない。
「帰れない。」
「あ、おまえ電車通か。」
町田は自転車で通っている。本当は電車で通ってもいい距離なのだが、運動部に所属している彼は体力をつけるためにそうしているらしい。
「じゃあ俺も待とうかな!」
僕の隣の席に町田がやってくる。
すっかり日焼けした腕が、白い半袖のワイシャツからのびていて軽快にスマートフォンを操作する指は骨ばっている。
勉強する気は無いんだなとそれとなく察した。
ふと外に目をやる。
何度ここから眺めただろう。
癖になってしまった。
放課後のグランド、飛ぶように駆ける君をいつも探している。
9/26/2023, 9:35:33 AM