私は1人でベッドの上で横たわっていた
動いていないのにスプリングがゆるく軋む
その音で私はまだ生きているのだと実感する
昨夜私を抱きしめ、
温もりを分かちあった
相手の腕を思い浮かべると、
胃のあたりがムカムカとし、
心臓が不規則にびくりと跳ねた
遠くでスマートフォンが鳴っている気がする
自分の内側の感覚には敏感だったが
外側にはいつも鈍感だった
だから外界とどう関わっていいのかわからない
昔からそうだった
スマートフォンの音を聞かないフリして
昨日の夜を思い浮かべる
初々しいカップルの初夜
バラ色の人生、バラ色の夜のはずだった
私にとっては暗黒の夜になってしまった
もう二度と思い出したくない記憶ほど
脳内にこびりつく
あの細くて白い腕の先、
芸術品みたいに綺麗でこの手に触れられたら
さぞ心地が良いだろうなと思っていたのに
私の心身はそれを受け入れなかった
ああ、また自分勝手だと反省する
私が彼の愛情という名の触れ合いを拒否した事で
向こうのプライドを傷つけ、
今頃向こうの脳内にも水垢のような絶望感が蔓延っていることだろう
自分のことでいっぱいいっぱいで
相手は昨夜どんな顔をして眠りについたのか
想像しようとしてものっぺらぼうしか思いつかなかった
申し訳なさと虚無感、自己否定
様々な感情がヘドロになり
私の体の中に満ちていく
もう暫く動けそうにない
しかし窓の外からは強い陽の光の気配がする
何を思ったか
少し手を伸ばしてカーテンを開けると
思いのほか優しい光が私を包んだ
ありのままの私を受け入れてくれるのは陽の光だけだった
朝日の温もりに身を委ね、
私はまたそっと目を閉じた
6/10/2024, 1:52:13 AM