バスクララ

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その目に今まで何を映してきたのかな。
曇ったガラス玉みたいな目をした君。
人生の大半の時を君と過ごしてきたけど、君はついに自らの意思で喋ることも動くこともなかったね。
僕は心の何処かで期待していたんだ。映画やアニメのように何らかの奇跡が起きて、君が歩いて喋るみたいなことが起きないかなあって。
だけどやっぱり現実は残酷だね。そんな夢物語叶うはずもなかった。
君とおしゃべりできたらどんなに楽しいだろうと思ったんだけどね。
まあいいさ。僕が死んだら君も棺の中に入れてもらう手筈になっている。
もしかしたら君はまだこの世界にいたいかもしれないけど……主のいなくなった人形なんて無造作に捨てられるのがオチさ。
ただでさえ僕の家族は男が人形遊びなんて、と理解を示さなかったからね。
もし僕がもっともっと健康体だったら君が付喪神になるまで待ったのだけどね。ままならないものだ。
……ねえ君、もし共にあの世へ逝けたのなら君が見た景色を僕に教えてくれないかな。
僕とのおしゃべりが恥ずかしいのなら他の誰かに言付けても構わない。
僕は君のことをもっとよく知りたいだけだから。
……頼んだよ。僕の初めての友達。

8/14/2025, 12:41:01 PM