鏡の中の「私」は強い。鏡の前の「僕」は弱いけれど。鏡の中の「私」は自信家だ。鏡の前の「僕」にそんな自信はないけど。鏡の中の「私」は笑っている。鏡の前の「僕」は到底笑える気分じゃないけど。ある日「私」を壊してやりたくて、鏡を割った。鏡は割れた。あっけなく割れた。もう、「私」が写ることはない。そう思った束の間。『だから君はいつまで経っても「僕」なんだよ』頭の中の「私」はそう嗤った。
11/3/2023, 11:04:46 AM