松乃かぐら

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『岐路』に立つバイトをやっている。

生きていれば幾度となく岐路に立つが、
あまりにそのことで悩んでいると、どうやらこの『岐路』に迷い込んでしまうらしい。

『岐路』は辺り一面何もない長い道路で、突き当りで二股に分かれて伸びている。
それぞれの道には「結婚する/しない」など書いてあり、人はそれを見てどちらかに進んでいく。
俺はその分岐点に立って、その選択を記録している。どう考えても変人だが、俺の姿は見えていないようだ。

『岐路』に来た人が分岐点で悩む時間は平均1日。
だが、中には数ヶ月、数年ほど悩み『岐路』から出られない人もいる。ちなみに俺も例外ではない。

俺が『岐路』に迷い込んでもう100年が経った。
見かねた名状しがたき存在に命じられ、50年前だろうか、『岐路』に立つバイトを始めたのだ。
毎日、書き留めた人々の選択を眺めては、俺はどっちに進むべきなのか悩み続けている。

「夢を追い続ける」か「諦める」か。
簡単な二択なのにな。

テーマ【岐路】

6/8/2023, 1:45:18 PM