天気予報では曇りで済むはずだったのに。
生温い空気を残しながら灰色の雲からは大量の雨が降っている。
近くに屋根のある場所があって良かった。
隣りの彼女もここに避難してきたようで、だいぶ濡れている。
簡易なベンチに腰掛け、濡れている事には気にもとめず、ぼーっと空を眺めている。
その表情はなんだか悲しそう。
きっと彼とケンカ別れをしてきたのだろう。
この雨は彼女の心模様を示しているのだ。
この雨がもう少し続くようならば声をかけよう。
僕が晴れにしてみせるよ。
―――――――――
今日は災難続きだ。
早々に帰ろうとしたところ、先生に呼び止められ手伝いをお願いされた。
予定より遅くなったから近道しようとしたらこの雨。
全身ずぶ濡れに加え、雨宿り先にいたこの男。
こいつは学校でも有名な勘違い男。
自分を少女漫画のイケメンとでも思っているらしい。
それだけならまだいいが、自分の妄想と現実の区別がつかないのか色んな女子によくわからないイケメンムーブをかましてくる。
そして、かれこれ10分くらいこちらを見つめている。
たぶん何か妄想している。
そろそろ動き出しそうだな。
よし、この雨が止まないならば覚悟を決めて走って帰ろう。
『いつまでも降り止まない、雨』
5/25/2023, 10:38:01 AM