t「ただ君だけ」
過去を振り返った時、変わり者だと笑われた自分が複雑な思いを抱えながら一緒に笑ってる姿が瞼の裏に浮かぶ。
普通でありたいと思っているのにどこか普通と違うらしい自分。でもどこが違うのか分からず、笑い者にされて言い返せる言葉も無ければ、孤立する恐怖に打ち勝てるわけでもない。ただ毎日自分を否定して笑う。
帰宅して人がいない空間にほっと息が胸のうちからこぼれた。人といるのは好きだけど、それよりも今は笑われない時間の方がずっと安心出来る。
リンリンと鈴の音を響かせて扉の奥から我が家の愛犬が顔を出す。無垢な瞳と純粋な好意を持って近寄る愛犬に思わず心からの笑いがこぼれる。
ただ君だけは、傷付けずに自分のそばに居てくれるのだと。
5/12/2025, 9:08:47 PM