冬が来ると雪を待っていた時代が、自分にもあった。
寒さなんか気にせずに、ただ真っ白な雪景色を待ちわびていた時代が。
今では、雪の予報を耳にすれば、まず翌日の電車の運行が心配になる。
駅までの道のりを歩くのにも危険が付きまとうし、寒さも一層増して、ポケットに手を入れて体を丸めながらの出勤だ。
明らかに迷惑な朝となる。
これが、大人になるということか。
…なんて、ちょっとだけ寂しくなる。
でもたぶん、たとえば富良野の雪原に一人立ち、キラキラと光る照り返しを受けて、その光景をじっくり堪能できるとしたら、きっとこの世界は素晴らしいと思えるんじゃないだろうか。
自分の心が荒んでしまった訳じゃない、暮らしの中で、雪を待つ気持ちが薄れてしまうような現実と闘っているだけ。
それが、大人になるということ。
子供の頃に見た雪景色は、今でも心に残ってる。
この記憶がある限り、自分はこの世界に絶望しない。
両親が見守ってくれる世界。
時の流れが永遠だった時代。
またいつか、あの頃の感情を取り戻して、白銀の世界を楽しめる日が来るだろうか。
その時はまあ、のんびり温泉にでも浸かって、雪見酒なんていいかもな。
大切な人と一緒に、闘いを終えた後の休息の一時を過ごしたい。
今はただ、その日を夢描いて、眼前に広がる雪を待つ。
12/15/2024, 12:21:35 PM