「奇跡をもう一度」
奇跡、軌跡、奇蹟、鬼籍…。あ、最後は違ったな。
「奇跡て一度にならず二度も三度も起きたら
奇跡て云わなくなる。現実を見なさい」と
貴女は拉麺を啜りながら云う。
「…身も蓋も無い…奇跡があることに夢を見たいじゃないですか」
「奇跡に夢を持った所で何になるの?奇跡があるなら、
奇跡が起きてくれって願うっつーの」
テーブルにくしゃくしゃになった馬券。
僕はくしゃくしゃになった馬券に目を通し広げた。
先輩がやさぐれてるのは掛けた5万が見事に外れて
帰り道に買い物帰りの僕とばったり逢いアンタの運のツキワルさよと訳の分からない事を云いながら僕に拉麺を集り今に至る。
「あの番でいけるって思ったのに、なぁんで彼処で抜かれんの
最後に最後でそれこそ奇跡が起きても良いじゃんね」
奇跡は起こらない。5万損した。
明日は仕事。奇跡は起こらないと
先輩は呪文を唱えるように繰り返した。
10/2/2024, 12:54:35 PM