黒山 治郎

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文から面を上げ、翳る窓辺にほうと呆れたれば
つれなし玉桂は沙汰もなく
安穏たる水面を守りたれど
日を掲げた八咫烏はいつに飛び失せきといふや
口を引き垂る我は行燈の灯に
影引き伸ばされんばかりなれど
ありつる文へと心を思ひなおり
神妙なる言の葉に移りゆく由無し言を
かの給ひける恋心へ返そうと
焦らむ筆心静かに文を書きゆく。

今宵の望月へ祈ぎ事が許されば
今一度だに君のさまを目にして
直ちに声をゆかしがれり
せめて、この祈ぎ事が月に及ぶ程までは
文に記せし恋心が移ろはぬこと乞ひ願ふ也。

--作者の一言--
古文いと難しぃ




                 ー 月に願いを ー

5/26/2024, 2:47:51 PM