試験に落ちた。
大切な試験、通るだろうと慢心すらしていた試験に、自分が。
ザアッと血の気が引く。平衡感覚が不安定になって、そんな僕を追い立てるように甲高い耳鳴りがする。一緒に勉強した友達の嬉しそうな顔がこちらを向いたことに気がついて、手に持ったままだった用紙をくしゃりと握りつぶした。そのあとの記憶は、どうしてか朧気だ。
数日後に三者面談が決まったらしい。キリキリと痛む腹を抑えた。どうして?理由なんて簡単だ。あの試験対策はミスリードだった。出題の出し方もいやらしい。それにあの職員は自分のことを目の敵にしている、あいつのせいだ。
兄に謗られる。姉に失笑される。教師陣の不正を訴えた母にはため息をつかれた。どうして?だってそうじゃなくちゃ、こんなことになるはずがない。
聞き馴染みのない教員の声に意識が戻る。真っ先に映るのは頭を下げる母親の姿。そして校長や教頭、見覚えのない教師陣が一様に難しい顔をして母親の謝罪見下ろす様。
どうして?どうしてこんなことになっている?どうして関係ない母が泣いている?急な日程でも仕事の合間に駆けつけてくれた母が。白髪が目立つからと外では外さなくなっていた帽子を脱いで、この場の誰よりも深く頭を下げている?
どうして?
気がつけば僕の目からは涙が零れていた。
僕は何も言えないまま、ただ母の背中だけを見ていた。
『どうして』
1/14/2026, 12:56:20 PM