「遠くの街へ」 #02
「……嫌だなぁ…。」
積み上げられた段ボール箱を見て、もうそろそろここを出ていくと言う現実が私に押し掛けてくる。ここは一番の思い出がある場所で、絶対に離れたくないと思っていた家だった。でも、しょうがない。受け入れるしかない。受け入れたからこうやって荷物をまとめているんだ。
「よし。後は……」
今日は2/24日。私と彼の……結婚記念日。でも、午後11時を過ぎても、彼は帰ってくるきがない。分かってた。薄々。気づいてた。探偵さんに調べて貰った。結果は真っ黒。信じたくなかったよ。でもね、そうだよね。私になんて飽きちゃうよね。じゃあ、もう、いい。貴方が私を必要としてくれないなら。私も貴方を捨てたげる。だから今日、私の荷物を全部まとめてここから去る。
テーブルには私の欄は既に記入されている離婚届と、「さようなら。新しい奥さんとお幸せにね。」と書かれている手紙だけ置いて、私は彼が絶対に来ない遠くの街に引っ越す。
「私達どこから間違えたんだろうね。」
そう捨て台詞を言って私はもう二度と訪れることはない。彼との思い出のアパートを去っていった。
2/28/2023, 1:31:35 PM