無音

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【69,お題:星座】

「星って何万年も前の光が見えてるんだって」

そう言ったとき、兄はすごく驚いたような顔をして
少し狼狽えたあと「そう、なのか...和真は物知りだな」って、へにゃりとはにかんだ

まったく、腕っぷしは強いくせに何でこうも世間知らずなのか

俺に兄の記憶はない、実際に兄の口からそう告げられるまで知らなかったし
何なら今でも、からかわれてるんじゃないかとすら思っている

兄がいうには、俺が生まれる前に引き離されて俺は腹違いの兄弟らしい
自分に弟が居ることを知ってから、ずっと探してくれていたんだとか

兄がどんな人生を送っていたのか俺は知らない、でも顔や腕の傷を見るに
俺なんかよりもずっと大変な生活だったんだろう

「大変だな、生きるってのもさ」

真っ暗な中、2人で肩を寄せあって寒さを紛らわす、もう秋だ最近は随分と冷え込む
雪が降る前にちゃんと寝れる場所探さないと

「あ、ほらあれが秋の大四辺形、四角くなってるの見えるでしょ
 んで、そっからこう斜めに行くと、カシオペア座そのとなりがペルセウス座」

眠ってしまうといけないので、得意な星座の話をしてみる
兄は全くわかっていないような顔をしながらも、あれも星座か?向こうのは何だ?と
沢山質問をしてくれた、今まであまり話を聞いてもらえなかったから少し嬉しかった

「和真は、星が好きなんだな」

「まあ、皆よりは知識はあるかな」

溢れんばかりの星が輝く夜に、空き地の草むらに踞って共に夜を明かす
もう何度目か、そろそろ慣れてきた

「俺らが見てる星は何万年も前の光って話、さっきしたじゃん」

「ああ」

「なんかそれって俺たちみたいだなって、何となく」

ずっと求められず、自我を殺して生きてきた
自分がどういったものなのか、自分ですらわからなかった

そんな自分を、兄はずっと探してくれていたんだ
腹違い、半分他人であるにもかかわらず


吐き出した息が白い、きっと数日後には雪が降るんだろう

「寒いね」

「...だな」

10/5/2023, 10:45:46 AM