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ルール(オリジナル)

世界と平和はルールでできている。
「ルールを破りましたね」
どこで見ていたものか、取締官が翼を広げて空からやってきた。
私は無駄な抵抗を試みる。
「何のことです?」
「神は全てを見ています。あなたはさっき、人によって対応を変えました。全く同じものを、異なる値段で売ったそれは、争いを生む行為です。この世界のルールに反しています」
もちろん、それは私も知っていた。
「けれど、彼は貧乏だったんです。命の危機にありました。私は善意から行動したまでです。それでも罰せられるのですか」
「貧乏なのは彼の責任です。それに、高く買った者がどう思うか考えないのですか。安く買えた者も味をしめて今後、人の情に寄生するようになるかもしれません。それは果たして善でしょうか」
「……そんな。彼は今回の事で命を繋いで感謝して、貧乏から脱する道を目指すかもしれないじゃないですか。全員が必ずそうなると決まっているわけではないものにルールを定めるのはおかしいと思うのですが」
「そうでしょうか。学校にも職場にも守るべきルールがあります。世界も同じ。なぜそれがわからないのですか」
取締官は険しい表情でそう言って、私を更生施設に収容したのだった。

「主よ、世界に綻びが生じてきております」
取締官は神に報告した。
ルール違反者が増大している。
世界に平和をもたらそうと、己を賭してこの世界を作った創造主様。
争いを生まないようルールを定め、それを遂行できる人格に人類を矯正してきたのだったが。
世代交代が進むたび、矯正力が薄れてきているようだった。
「争いはどうあっても免れないというのか……」
姿は現さず、主は落胆したように呟いた。
「もはや皆が争いを選ぶのであれば、好きに滅ぶが良い」
「主よ、諦めないでください。人類を見限らないでください。我々が神の代行者として精一杯努めますから」
取締官の心は正義に燃えた。
世の争いの種を滅すべく、より一層の働きを神に誓うのであった。

4/24/2026, 11:36:15 PM