いぐあな

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SF(すこしふしぎ)
300字小説

トンネルの向う側

 幼い頃、私のお気に入りの遊び場は、近所の小さな公園のジャングルジムだった。
 赤や青、黄色に塗られた鉄の棒の中に短いトンネルがあって、夕刻まで遊んで帰った後、母に
『トンネルをくぐったら、草原で、ライオンがいたの!』
『シロクマさんが泳いでた!』
『大きなお船とペンギンさんがいた!』
 得意げに話していたという。
「そういう空想をして遊んでいたってことよね」
 狭い場所を通る、日頃とは少し違う体験に、そんな景色を当てはめていたのだろうか。

「お母さ~ん」
 実家に里帰り中、あのジャングルジムで遊んだ息子が駆けてくる。
「このジャングルジムすごいよ! トンネルをくぐったら向こうから宇宙人が『こんにちは』って!」
「……えっ?」

お題「ジャングルジム」

9/23/2023, 11:52:31 AM